7.隆くん

作文ワールドU
@「きれいなカップ」
A「ブラックバス」
B「サイパンの海」
C「音読の宿題」
D「サッカー・エルビス」
E「五回連続出場をかけて」

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7.隆くん

 隆くんは小学4年生。いろいろな活動をしている。愛媛県に住んでいる。

@「きれいなカップ」

 これは、「あんなこと、こんなこと」という体験の中の「きれいだな」という感想に基づいて書かれたものである。(「あんなこと、こんなこと」についてはこちらへ)。

はじめの作文 添削例
 ぼくは、いごをやっています。ぼくは小学1年生からいごを始めました。いごをやり始めたきっかけは、おじいちゃんがいごをやっているのを見て、「おもしろそうだな」と思ってやり始めました。いごは少しむずかしいのでやり方をおぼえるのはたいへんでした。少しやり方が分かりだしたらじいちゃんにちょうせんしてみたりもしたけれどまだまだじいちゃんにはかないませんでした。
 いごをやり始めて1か月くらいした時に、ぼくはいごの先生の所に習いにいきました。先生は大山先生です。大山先生は教え方が上手でとてもやさしい先生でした。それにこの先生は大会でゆう勝したりして有名な先生です。この先生に教えてもらったため、少しずつ上手になっていきました。
 ある日大山先生はとつぜんぼくに
「隆くん、少年少女全国いご大会の県大会にでてみない」
と言われてびっくりしました。なにしろえひめ県からたくさん小学生が集まって一位二位をあらそう大会だったからです。
 そしていよいよまちにまった大会の日がやって来ました。でもぼくは「少し勝つのはむずかしいんじゃないのかな」と思いました。でもがんばったけっか二勝二敗でした。少しざんねんだったけれど気を取り直してもう一度練習をし始めて、先生を高山先生にかえました。そして二年生になってもう一度大会に出ました。見ごとじゅんゆう勝でした。それでカップをもらいました。そのカップは金色に光っていて細かいところもていねいに作っていました。ダイヤモンドのように光っていたからダイヤモンドをもらった気分のようでした。とてもうれしかったです。 

← そのきっかけは、

← ……と思ったからです。おじいちゃんに教えてもらいましたが、むずかしいので、







← ゆう勝したこともある有名な……

← ある日、ぼくは大山先生にとつぜん、
※ 言われたのはいつごろか。

← ……からです。でも、ぼくはでることにしました。
※ 大会のあった日を書いておこう。
← 待ちに待った
← 勝つのは少しむずかしい

※「二年生になって……」で改行する。



← ダイヤモンドをもらったような気分でした。

 小学生の時から囲碁のできる環境が整っているのは、俳句と同じように、愛媛というお国柄なのだろうか。

書き直した作文
 ぼくは、いごをやっています。小学1年生から始めました。そのきっかけは、おじいちゃんがいごをやっているのを見て、「おもしろそうだな」と思ったからです。おじいちゃんに教えてもらいましたが、むずかしいので、やり方をおぼえるのはたいへんでした。少しやり方が分かりだしたら、じいちゃんにちょうせんしてみたけれど、まだまだじいちゃんにはかないませんでした。
 いごをやり始めて1か月くらいした時に、ぼくはいごの先生の所に習いにいきました。先生は大山先生です。大山先生は教え方が上手で、とてもやさしい先生でした。それに、この先生は大会でゆう勝したこともある有名な先生です。この先生に教えてもらったため、少しずつ上手になっていきました。
 春のある日、ぼくは大山先生に、
「隆くん、少年少女全国いご大会の県大会にでてみない」
と言われてびっくりしました。なにしろ、えひめ県からたくさん小学生が集まって一位、二位をあらそう大会だったからです。でも、ぼくは出ることにしました。
 六月十二日、いよいよ待ちに待った大会の日がやって来ました。でも、ぼくは「勝つのは少しむずかしいんじゃないのかな」と思いました。でも、がんばったけっか、二勝二敗でした。少しざんねんだったけれど、気を取り直してもう一度練習を始めて、先生を高山先生にかえました。
 二年生になってもう一度大会に出ました。見ごとじゅんゆう勝でした。それで、カップをもらいました。そのカップは金色に光っていて、細かいところもていねいに作ってありました。ダイヤモンドのように光っていたから、ダイヤモンドをもらったような気分でした。とてもうれしかったです。 

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A「ブラックバス」

 隆くんは夏休みから始めた。これは二作目である。

はじめの作文 添削例
 7月24日に石手川ダムへブラックバスをつりに行きました。着くとたくさんつり人が来ていました。とても暑かったので気温が35度をこしていました。しかも温度計のそばにあったペンがとけていました。
 やっとしかけができて第一とう目を投げる時にはもう体力が半分落ちていました。その時さおがググッと引き込まれました。それは投入して3秒ほどたってからでした。40センチ級の大方のブラックバスでした。水面でジャンプしたのでとてもおもしろかったです。
 1時間ほどしてアタリが止まったので休けいしているとカメがいました。近くにいたのでさわってみようと思って手をのばすとすばやく泳ぎだしました。しかしそれがとても速く、手足を上手に動かして泳いでいるのを見るととてもおもしろくなってきました。
 しばらくするとカメにつづいてヘビがしげみから出てきました。ヘビは近くにいたけど、さわりたくなかったのでにげました。ヘビはあさい所を泳いで何かよく分からないことをしていました。それは見ていてもそんなにゆかいではありませんでした。
 気がつくと夕方でした。つり人がぼつぼつ帰りだしたのでお母さんが
「もう終わりね」
と言ったしゅん間引きずられそうなくらい大きなアタリがきました。上げると50センチのちょう大物でした。最高の気分で最後をしめくくれたのでよかったです。
※だれといっしょに行ったのかな。
← とても暑く、

※「しかも」はいらない。

※「第一とう目」は「目」があるので、「第」はいらない。
← すぐにさおがググッと
※「大型の」? 「大物の」?
※1時間にどのくらいつれたのかな。
← ……止まったので、休けいしていると、……

※「しかし」はいらない。


← しばらくすると、カメに……








← ……しゅん間、さおが引き込まれそうな……
← ……しめくくれました。
※「よかったです」をとってみよう。どんな感じだろうか。

 初めに大物が釣れて、帰りに超大物が釣れたというのは、なかなかドラマティックである。間にカメやヘビの話が入っているのもよい。ドラマを盛り上げる伏線ともなっている。

書き直した作文
 7月24日、石手川ダムへお母さんといっしょにブラックバスをつりに行きました。着くとたくさんつり人が来ていました。とても暑かく、気温が35度をこしていました。温度計のそばにあったペンがとけていました。
 やっとしかけができて、一投目を投げる時にはもう体力が半分落ちていました。すぐにさおがググッと引き込まれました。それは投入して3秒ほどたってからでした。40センチ級の大型のブラックバスでした。水面でジャンプしたのでとてもおもしろかったです。その後、27〜31センチメートルのブラックバスが3びきつれました。
 1時間ほどしてアタリが止まったので、休けいしていると、カメがいました。近くにいたので、さわってみようと思って手をのばすと、すばやく泳ぎだしました。しかしそれがとても速く、手足を上手に動かして泳いでいるのを見ると、とてもおもしろくなってきました。
 しばらくすると、カメにつづいてヘビがしげみから出てきました。ヘビは近くにいたけど、さわりたくなかったので、にげました。ヘビはあさい所を泳いで、何かよく分からないことをしていました。それは見ていても、そんなにゆかいではありませんでした。
 気がつくと夕方でした。つり人がぼつぼつ帰りだしたので、お母さんが
「もう終わりね」
と言ったしゅん間、引き込まれそうなくらい大きなアタリがきました。上げると、50センチのちょう大物でした。最高の気分で最後をしめくくれました。










← 25〜30センチメートル

 「よかった」という言葉を使わなくても「よかった」様子が描けているという、そんな作文が書けるようになってくれれば、と思う。

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C「音読の宿題」

 近ごろは音読の効用が見直されている。最初の題は「音読をわすれちゃった」であった。

はじめの作文 添削例
 ぼくはこの前、音読の宿題がありました。家に帰るとまず宿題をして、それから音読をしました。その日は一回もつまらずにていねいに読めたので、上機げんでした。そして計画帳を見て、二、三回見直しをしてぐっすりねむりました。
 次の日、学校に行って、ランドセルをあけたとたん、すごいショックを受けました。なぜならあれほどがんばった音読だったけど、音読カードをわすれたからでした。音読カードとは、音読をしたしょうこにおうちの人のサインを書いてくる物なのです。なのでどれほど音読をしても音読カードをわすれたら音読をわすれたことになるのです。
 いよいよ先生が教室に入ってきたのでぼくはしぶしぶ
「音読をわすれたのできょうじゅうにやります」
と言いました。
 その時はそれで先生はゆるしてくれたけど、朝の会が終わって
「今日、何かをわすれた者はたちなさい」
と言いました。ぼくはおそるおそる立つと、なんとクラスの三分の一ぐらいわすれ物をした子がいました。なので1時間ぐらいおこられました。ぼくは、一回ぐらいわすれ物をしてもいいじゃないか。と思いました。
※「ぼくは」をとる。
← 家に帰ると、まず、ほかの宿題をして、それから

← 二、三回宿題を全部終えたことをたしかめて

※「なぜなら」をとろう。理屈っぽいから。
← 音読カードをわすれたのです。
← サインをもらって
※「なので」は「だから」にしよう。










← ……子がいました。そして、1時間ぐらい
← ぼくは「一回ぐらい……いいじゃないか」と思いました。
※ この考えはよくないな。実際にそう思ったのなら、書くのはかまわないが、一回でも百回でも、わすれたことに変わりはないからね。

 この作文には次のような講評を付けた。
 「いい宿題が出ているね。音読はとてもいいことなんだ。国語の力がつくばかりでなく、頭のはたらきもよくなるからだ。作文道場でも音読を勧めている。国語の勉強をする子には、読めない漢字の読みを教えてから音読をさせる。その後、読んだ文章のあらすじやあらましなど、文章の要約にかかるわけなのだが、ときどきはもう1回読んでもらって、すらすら読めるかどうかを確かめる。すらすら読めれば、その分力がついていることが分かるからだ」

 ついでに言えば、初めての子には、今習っているあたりのところを読んでもらう。すらすら読めるかどうかによって、国語の力がどのくらいあるか、だいたい分かるからだ。

書き直した作文
 この前、音読の宿題がありました。家に帰ると、まず、ほかの宿題をして、それから音読をしました。その日は一回もつまらずにていねいに読めたので、上機げんでした。そして、計画帳を見て、宿題を全部終えたことを二、三回確かめて、ぐっすりねむりました。
 次の日、学校に行って、ランドセルをあけたとたん、すごいショックを受けました。あれほどがんばった音読だったけど、音読カードをわすれたからです。音読カードとは、音読をしたしょうこにうちの人のサインをもらって持っていく物なのです。だから、どれほど音読をしても音読カードをわすれたら音読をわすれたのと同じことになるのです。
 いよいよ先生が教室に入ってきたので、ぼくはしぶしぶ
「音読をわすれたので、今日中にやります」
と言いました。
 その時はそれで先生はゆるしてくれましたが、朝の会が終わって
「今日、何かをわすれた者は立ちなさい」
と言いました。ぼくはおそるおそる立つと、なんとクラスの三分の一ぐらいわすれ物をした子がいました。そして、1時間ぐらいおこられました。
 ぼくは最初、「一回ぐらいわすれ物をしてもいいじゃないか」と思いました。でも、先生の話を聞いて、音読は目を動かし、声に出すことにより、言葉の美しさと内容を理解することができ、耳から音を聞くことで、三つの感覚器官を働かせ、脳を動かすことが分かりました。これからも音読をわすれないようにしたいです。

 音読の大切さに気づいてくれたようだ。

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E「五回連続出場をかけて」

 隆くんは勉強もがんばっているが、スポーツでは万能ともいえる力をもっているようだ。その一端は、掲載予定の「D『サッカー・エルビス』にうかがわれるが、ここでは、ここいちばんにかける努力の模様を紹介しよう。
 隆くんは、だんだん月に一度まとめて6〜8枚書くようになったが、それでは時間をとるのが難しいだろうから、2枚ずつでよいから毎週コンスタントに書こうと勧めている。今回は2回に分けて書いてきた。

(1) 添削例・諸注意
 ぼくたちの学校の運動会は、赤、白、黄、青の、四つのブロックに分かれて戦います。各学年2、3この競技に出場することができます。それ以外に、全校色別ブロックリレーと、全校リレーというリレーがあります。全校色別ブロックリレーとは、各学年各ブロックの男女2位から5位までの人が出場できるリレーです。全校リレーは、一番走るのが速い人が出場できるあこがれのぶたいです。
 僕は今、桑山小学校の男子ゆい一の4連ぱの記録をもっています。一方、女子では若原さんが女子ゆい一の4連ぱ記録をもっています。そして今年、ぼくの入った白ブロックは足の速い強ごうたちがせいぞろいしました。みんなの50メートルの記録、ぼくのタイムは8秒1、亀有くんは7秒8、山本くんは8秒0、有川くんが8秒2、三崎くんが8秒3です。
 選手を決める時には、まず35人で50メートルを走り、上位10名が選ばれます。
 5人ずつスタートラインにならび、ぼくは先生の「ヨーイ、ドン」のかけ声とほぼ同時に、思いっきり地面をけってスタートダッシュしました。しかし、50メートルを半分ぐらい走ったところでつまずきかけて、こけそうになりました。「まずい」、ぼくは心の中でそう思い、こけるのを必死にこらえ、後の半分をダッシュでかけぬけました。タイムは8秒3、トップでゴール、なんとか第1次予選を通過しました。
 次に、一次予選を通過した10人が100メートルを走ります。10人が5人ずつに分かれて走り、上位3名が次のステージに出場できます。ぼくは先に走りました。
 「いちについて」
 ぼくはスタートラインに立ち、落ちついて呼吸をととのえました。「ヨーイ、ドン」、5人がいっせいに走り出しました。ぼくはコースの内側をとり、力を残し、余裕の2着でゴールしました。


← 2、3種目




← 各学年各ブロックで走るのが一番速い
← 4回連続出場、4連ぱの記録



← このブロックのメンバーの50メートルのタイムは、ぼくは8秒1、亀有さんが7秒8、……



※「5人ずつ……」の段落を前の段落につなぐ。

← しかし、半分くらい……







← 次のステージに進みます。
 

 隆くんには、直しよりも続きを書くよう勧める。すると、すさまじいばかりの努力の記録が届いた。

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(2) 添削例・諸注意
 ぼくはこの日のために、自分の走るフォームを直す特訓をしました。勉強する時は少しこしをうかしたり、足をのばしたり、走る時でも、夏休みに見た世界陸上大阪の、パウエル、タイソン・ゲイの走りを思い出し、うでをまっすぐふり、足で地面をけって真っすぐ走る練習をビデオにとって、何度も何度もチャレンジしました。食生活にも気をつけました。例えば、ジュースやおかし類をかなりひかえ、肉、魚、野菜などをできるだけたくさん食べるようにして、じょうぶな体作りにはげみました。この特訓はぼくにとってかなりきびしく、まさに地獄のトレーニングでした。練習がつらい時は、「ぜっ対この特訓を乗りこえて必ずそうやに勝ってやる」と、自分に言い聞かせました。そして、夏休みが終わるころ、ぼくのタイムは0.2秒も上がっていました。
 そして、今、最後の戦いの時が来ました。スタートラインには、桑山小学校五年生白ブロック男子の中で最も足の速い6人です。内側から山本くん、有川くん、五味くん、亀有くん、ぼく、牧原くんの順でした。ひざががくがく鳴って、せなかに一筋のつめたいあせが流れました。
「いちについて」
6人が自分の位置につき、ぼくは5メートル先の地面を見つめました。
「ようい」
横にいる亀有くんの指がピクッと動き、心ぞうがあばれだしました。
「ドン!」
地面を思いっきりけってスタートしました。ぼくが思うには、今までにこれほどいいスタートダッシュは切れたことがないようなスタートダッシュでした。ぼくはコースの内側を走り、トラックを半分まで走りました。しかし、ぼくの後ろ50センチの所には、亀有くんにつめよられていました。ぼくは、残りの力をふりしぼってラストスパートをかけました。ゴールまであと2メートルの時、亀有くんとかたがならびました。ぼくは最後の力をふりしぼってゴールにかけこみました。結果はきん差でぼくが一番。全校リレー出場となりました。
 ぼくは念願の、桑山小学校五年生男子唯一の全校リレー5年連続出場を決めることができました。本番の運動会では、全校リレーでも一等になり、白ブロックも見事優勝をなしとげました。ぼくは、夏の特訓はつらかったけど、全校リレーで成果をあげることができ、何事にも努力は大切だと思いました。



◎ これは「理に適っている」と言っていいようだ。ハードルの為末選手も同じことをしているということだ。
◎ この節制は大したものだ。





※「そうや」というのは亀有くんのことかな。




← ……6人がならびました。







← ぼくの心ぞうが……


※「ぼくが思うには、」を削除する。




← 亀有くんが迫っていました。




◎ おめでとう。




◎ もう一つ、おめでとう。

 努力のしかた、特に節制については脱帽するほかはない。
 実際の添削答案には段落ごとに赤で丸や二重丸、三重丸をつけているが、今回はスタートからゴールまでのところと最後の段落には三重丸がついている。作文でも優勝、と言ってよい。

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